サンクコスト効果(その2)

経済学的な考え方

会議で議論になる

企業の意思を決める際に、会議で下記のような意見が出て議論になる事があります。
「今この企画を止めたら、既に投資している3,000万円はどうするんだ?」
「この店舗を開業する為には2,000万円も費やしているので今更やめる訳にはいかない。」
「ここまで辿り着くのに3年もかかったので、厳しくてもこの事業を続けるしかない。」

サンクコストは無視する

しかし企業が今後の事業展開や投資先を考える上では、サンクコスト(既に費やした費用)は無視して意思を決めなくてはいけないというのが、経済学ではセオリーとされています。

つまり、無理して諦めずに続けてしまう事が、事業が失敗する原因に繋がる事も多いのです。
誤解しないで頂きたいのはあくまでも、『費やした費用』を無視するのであって、『諦める』という訳ではありません。

中小企業の経営者は・・・

しかし現実的には費やした費用を無視して、企業が意思決定をするのは非常に難しい事です。
特に経営者と株主が同じ場合(未上場の中小企業や個人事業主)は、まず損を取り返そうとして諦めがつきません。
更に、金融機関で借り入れをしている場合には事業計画を変更することになるので信用や信頼が失墜してしまい、新たな融資が受けられない可能性も出てきます。

経営者の立場から・・・

その結果、失敗に向かって更にお金や時間を費やす状況に陥り、どんどん経営が悪化してしまうのです。
そして頑張れば頑張るほど止められなくなってしまうのです。
そうならない為には、下記の3点を実行することです。

第三者の意見を聞く

定例会議で外部からの意見を聞く。
取り返しがつかなくなる前に、各方向からの意見を聞く事で冷静な判断が出来る。

社内で公言する

最初に投資する金額や期間を社内会議で伝えてから新事業を開始する。
社内で公言してしまう事で、成果が出ていないのにズルズルと事業を継続しにくくなる。

撤退の時期を決める

新事業を開始する前に、失敗した場合の対策を決めておく。
要するに、事業を開始する前に撤退の時期を先に決めてしまうという事です。

社員の立場から・・・

成功した場合のことしか考えたくない経営者の方も多いですが、最初に失敗した場合の事を考えておかないと、実際に問題が起きてからでは対策も限られてしまいます。

問題が起きた場合の質問をした際、下記のような答え方をする経営者には注意が必要です。
「失敗したら、失敗した時に考える。」
「問題が起きてもいないのに、先の事を考えても仕方がない。」
「実際に問題が起きてみないと分からない。」
「自分が失敗するとは思っていないので、失敗した時のことは考えたくない。」
「失敗した時の事なんか考えているから失敗するんだ。」

要するに、自分が失敗したくないから失敗した時の事は考えたくないのです。
それでも成功している経営者は多数存在します。
しかし現在、成功している経営者でも最悪の事態を想定していない人は、一度の失敗がキッカケで大転落してしまう可能性が高いので注意が必要です。

サンクコスト効果のまとめ

サンクコスト効果は
『使った時間や費用の、元を取り返したい』
という人間の本能なのでその効果は絶大です。

『サンクコスト効果を上手に利用できる』か
『サンクコスト効果に振り回されてしまう』かが
ビジネスを成功させる重要な要素の1つである事には間違いありません。